第1章 基本的な概念 - 上極限と上限、あるいは下極限と下限

収束の条件、Cauchyの判定法(定理8)の附記に上極限、下極限が登場する。一読して、上極限と上限、下極限と下限の差が理解できなかったので、改めて整理する。

 

上限・・・数列{a}が有界のときに定まる値(定理2)

上極限・・・数列{a}の部分数列{a,an+1、・・・}の上限lが作る数列{l}の極限値。({l}は単調で有界なので定理6により、必ず収束し、極限値を持つ)

 

どちらも、同じ数列{a}に対してただ一つ定まる。では、上限と上極限が異なるのはどのような場合か。これは少し考えるとすぐにわかる。上限は1から始まるすべてのnについての値であるのに対して、上極限は初めのn-1項を除外した残り部分の上限について、nを大きくしていった場合の極限である。極端な例を言えば、1項めが100、2項目以降はすべて1となる数列{100,1,1,1,・・・}においては、上限は100、上極限は1である。