第1章 基本的な概念 - Weierstrassの定理
定理2.数の集合Sが上方[または下方]に有界ならばSの上限[または下限]が存在する[Weierstrassの定理]。
これは納得して理解するために、何回も読みなおした。
以下、自分なりに理解したことを、くだけた表現で再現する。s、A、Bは「解析概論」の原文の説明の通りで、Sは下方に有界な集合、AはSの下界の集合、BはSの下界ではないものの集合(Aの補集合)、sは切断(A,B)で定まる実数である。定理1(Dedekindの定理)によりsはAの最大値もしくはBの最小値のどちらか一つであるが、Bの最小値として矛盾があることから、Aの最大値であること(=Sの下限)を説明する。
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s:「俺はBの最小値だ。文句あるか」
Dedekind氏:「しかし、お前はBに属しているので、Sの下界にはなれないぞ」
s:「わかってら、そんなこと」
D氏:「Sの下界じゃないってことは、Sの中に、お前より小さいやつがいるってことだ」
s:「ええっ? なんでだよ」
D氏:「もしお前より小さいやつが一人もいなかったら、『Sの全員がお前よりも小さくない』ってことになって、お前が下界の定義に当てはまっちゃう。そうしたら、もうBにはいられない」
s:「・・・。ま、まあ、そりゃ、一人ぐらいそんなやつはいるかもな。でも俺はSで最小でなくっても、Bでは最小だ」
D氏:「お前がBで最小だっていうのなら、お前より小さいやつはみんなAに属することになる。今言ったSでお前より小さいやつも、Aに入ることになる。仮にこいつを白鳥さんとしよう。白鳥さんはSにもAにも属することになる。こりゃ、困ったことだ」
s:「それが何か悪い」
D氏:「いいか。白鳥さんはお前より小さい。ってことは、白鳥さんとお前の間には、必ず別のやつがいる。例えば、白鳥さんとお前を足して2で割ったやつを小田原城とすれば、小田原城は白鳥よりは大きくて、お前よりは小さい」
s:「だから何なんだ」
D氏:「小田原城が白鳥さんより大きいってことは、小田原城は下界にはなれない。下界になれないってことは、下界の集合であるAに属すことができないってことで、仕方なくBに属することになる。しかし、小田原城はBの最小値を名乗るお前より小さいからBに属せない。困ったことだ」
s:「でも、どうして小田原城は白鳥から大きいからって下界になれないんだ?」
D氏:「もし小田原城が下界だとすると、白鳥さんの立場はどうなる?小田原城が下界ということは、少なくとも小田原城より小さいやつはSに属せないはずだ。でも白鳥さんはSに属している。矛盾だ。だから小田原城は下界になれない」
s:「なるほど・・・」
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もう少し真面目にまとめたものが次。
・sはB(Sの下界ではないものの集合、換言すればSの下界の補集合)に属する。
・sはBの最小値である。
ここのどこに矛盾があるのか。
1.sはBに属するから、Sの下界ではない。
下界の定義:集合Sに属する数がすべて一つの数Mより小ではないとき、Mはその一つの下界と呼ぶ。
2.sはSの下界ではないから、「Sに属する数がすべてsより小ではない」ことはない。
3.すなわち、「sより小ではない」ことを満たさないもので、Sに属するものが存在する。
4.「sより小ではない」ことを満たさない数とは、sより小な数である。
5.すなわち、Sに属し、sより小なる数が存在する。これをxとする。
6.sはBの最小値であるので、sより小なる数xはBには属せない。したがってxはA(下界の集合)に属する。(xはSに属し、かつAに属している)
7.x<sなので(x≦sではない)、xとsの間に数bが存在する。このとき、x<b<sである。
8.x<bなのでbは下界ではない。なぜならば、bが下界とすると「Sに属する数がすべてbより小ではない」はずだが、xはSに属してbよりも小となってしまうからである。
9.bは下界ではないのであれば、Aには属することができず、したがってBに属さなければならない。するとBの最小値sとの間の関係、b<sが成り立たない。
最初、わかりにくかったのは2.の否定形。3、4、5とかみ砕いて納得。
次にわかりにくかったのは6の時点で、SにもAにも属するsが存在しても、まだ矛盾が出ない点。これはS、A、Bを整理して理解していないため混乱した。SとBを無意識のうちに同一と考えてしまうのか。