第1章の議論の流れ

実数の切断を定義し、その連続性を説明(附録Ⅰの1~3、セクション2)
有理数の切断A,A'を定義
・切断の「境界」として実数を定義
有理数切断A,A')で有理数の「境界」が存在しない場合、有理数に替わる何かがあると想定して、それを「無理数」と呼ぶ、という議論の流れ。無理数有理数と大小関係がある、と前提を置いている)
*「境界」は明瞭に定義されていないが、「aより小なる有理数はすべて下組に属し、aよりも大なる有理数はすべて上組に属する」との記述が「境界をなす一つの有理数a」の説明としてあり(附録Ⅰの1)
*そのため、境界としての実数が、下組、上組に属する有理数と大小関係があることを示唆しているように思える。すなわち、実数の大小関係を定義するまえに、実数と有理数の大小関係が示唆されている?

・実数の大小関係を、下組集合の包含関係で定義。

・そこから、任意の実数の間に無数の有利数が存在することを導出(α<βならα<m<βを満たす有理数mが無数に存在)・・・①

・実数の切断(A,A')で定義されるαは、Aの最大値、もしくはA'の最小値であることを導出。(有理数の切断時のように、どちらにも属さない場合はないことを証明)

 ー 実数の切断A,A'から、有理数を抜き出した有利数の切断(A,A')を作る。

 ー 有理数切断A,A'は実数αを決める(実数の定義より)

 ー αは実数切断A,A'のいずれかに属する(実数切断の定義より)

 ー αが実数切断下組Aに属する場合、その最大値となる。なぜならば、

   (1)α<βとした場合、α<m<βとなる有理数が必ず存在する(上記①より)

   (2)mは有理数切断A,A'の上組A'に属する。なぜならば、αは有理数切断A,A'の「境界」で、それよりも大だからである。

   (3)従って、mは実数切断A,A'の上組A'に属する。

   (4)従って、β(>m)も実数切断A,A'の上組A'に属する。

   (5)すなわち、α<βとなる任意のβは実数切断A,A'の上組A'に属する。

・すなわち、実数は(切断境界を持たない場合のある有理数とは異なり)「連続」

・Dedekindの定理「実数の切断は下組と上組の境界として1つの数を確定する」

・「有界」「上界」「下界」「上限」「下限」を定義(セクション3)

・上限の定義:集合Sの上限aとは、次の2つを満たすもの。

 (1)Sに属するすべてのxに関してx≦a。(・・・aがSの上界である)

  (2)a'<aとすればa'<xなるある数xがSに属する。(・・・aより小なる上界がないこと)

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上界、上限のイメージ


ワイヤシュトラスの定理を説明し、証明

・「数の集合Sが上方[または下方]に有界ならばSの上限[または下限]が存在する」

・「数の集合」は必ずしも「実数の集合」とは限らない!(はじめ、勝手に実数の集合と考えて理解していたが、「有理数の集合」でも「自然数の集合」でも成り立つ)

・(上方に有界の場合)Sの「上界」と「上界以外」が実数の切断を作る→この切断で定まる数sは「上界」の最小値か「上界以外」の最大値→「上界以外」の最大値とした場合、矛盾が発生→よってsは上界の最小値

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ワイヤシュトラの定理


・「数列」、「収束」、「極限」を定義(εと
n0を使う定義)(セクション4)

・数列の極限に関するいくつかの定理と例を説明

・収束数列の部分数列は元の極限値に収束

・αに収束する数列anについて|an|<MとなるMが存在し、さらに|α|≦M

・収束する数列どうしの加減乗除

有界な単調数列は収束する

・提示される例

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区間縮小法を説明し、証明(セクション5)

・実数の連続性に関する四つの基本定理が同等であることを説明

 -Dedekindの定理(実数の切断と境界の帰属→連続性)

 -ワイヤシュトラの定理(上限または下限の存在)

 -有界な単調数列の収束

 -区間縮小法

・数列{an}が収束するための必要十分条件(Cauchyの判定法);任意のε>0に対し番号nが存在し、p>n0、q>n0のとき|ap-aq|<εセクション6

・「上極限」「下極限」を定義…数列{an}の上限、下限が作る数列の極限

・「点列」と点列{Pn}の極限を定義

・点列{Pnの収束の必要十分条件を説明…2次元でのCauchyの判定法

・「点集合」と「集積点」を定義セクション7

・「有界なる無数の点の集合には、必ず集積点が存在する」(これもワイヤシュトラの定理)の証明

集積点を使ってSが「閉集合」であることを定義

区間縮小法を閉集合の列に拡大

 

函数」を定義(セクション8)

これまで数列であった極限を連続変数に拡大(セクション9)

・ε、δによる極限の定義

・1次元ではなく、多次元(P→A)

・極限の例

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・連続変数へのCauchyの収束条件の拡大を説明。説明のロジックは次の通り。

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連続変数について上極限と下極限を定義

函数がある点aで連続であることをε、δを使って定義(セクション10)

・「左からの極限」「右からの極限」「右への連続」「左への連続」を定義

指数関数について、有理数が定義域にある場合を既知として、極限の考え方を利用して、定義域を無理数に拡大

「中間値の定理」を説明して、証明。1次元の場合と2次元の場合(セクション11)

有界な閉区域で連続な函数有界で、その区域で最大、最小に到達する」ことの証明

・「連続の一様性」を定義して、証明

・内点、外点、境界を定義(セクション12)

・内点を使って開集合を定義

・点集合の間の距離、点集合の径、を定義

・領域、閉域、連結、連続体、近傍、を定義

・曲線、Jordan曲線、Jordan閉曲線、を定義。